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『ふるさと耳より・E便り』 No.61号 
ワーキングホリデー制度に取り組む
  にしめらそん
  宮崎県 西米良村 探訪記
日本一の木道    西米良村 キャンプ場・他 案内
◎ 西米良村へのアクセスと概要
  宮崎空港から西都市のバスセンターまで1時間。更に、1日4本しかない
  西都市から目指す西米良村(にしめらそん)の村所(そんしょ)行バスに
  乗り換えて1時間30分で到着。待ち時間を入れるとたっぷり3時間だ。

  バスは国道219号線を西都市の市街地を抜け、一ツ瀬川を挟むように山
  が迫り、時にはせせらぎとなり、時には満々と水をたたえる渓谷に沿って
  延々と一ツ瀬川の上流、村所に向かってのんびりと走り続ける。車窓から
  春を発見。対岸の枯れた木立の間に淡いピンク色の山桜の花だ。

  うとうと1時間、あっ、数軒の家並みの集落が見えたと思ったら、そこが
  西米良村だった。

  村所のバス停の国道筋に迫り出た山を切り開いてやっと建てられたたと思
  われる場所に民家、病院、郵便局、ガソリンスタンド、民宿などが並ぶ。
  ここの一帯が一番の繁華街のようだ。バス停は産直品販売所と同じ建物に
  なっている。お店の方に役場の場所を聞く。「役場はバス停からゆるやか
  な坂道を200bくらい昇り、信号を右折すると、すぐ見える」とのこと。
  早速、役場に向かい、話を伺いに企画商工課田爪竜治さんを訪ねる。

  西米良村は宮崎県中央部最西端、山々を源とする清流一ツ瀬川の最上流域
  に位置し、西都市までは車で1時間だが、西の熊本県湯前町まではわずか
  20分で経済圏は熊本県に依存しているという、人口1,327人ののど
  かな山里です。

   産業は花卉、ほおずき、ゆず、椎茸、お茶の栽培などの農業が中心だ。
  特にゆずの生産と花卉栽培が盛んで、西米良が力を入れているワーキング
  ホリデーの受入先にもなっている。
  花卉栽培の温室は平地が無い山間地の難しさを象徴して、国道219号線
  から小川城址公園に向かう急な坂道を約5q昇った、何と標高800bと
  いう高地にあった。元々利用頻度が少なかった村の運動場を転用して数十
  棟の温室を建てた。この冬でも温室ではパンジーの栽培が行われていた。

  宿泊施設は民宿が数軒と夕食には鹿肉の刺身、猪鍋、やまめの塩焼きなど
  の地元の素材を出してくれるうれしいビジネスホテルの富士屋1軒と西米
  良村第三セクターの株式会社「米良の庄」が運営する西米良双子キャンプ
  場がある。

  西米良双子キャンプ場は、国道から一ツ瀬川にかかる全長日本一140m
  の木造車道橋「かりこぼうず大橋」を渡った対岸にある。
  管理棟、移築いろり付民家、コテージ9棟、バンガロー5棟。定員が5人
  〜30人で、総収容人数記約200名。その他テント10張可能。
  コテージを覗くと、特に、平成8年に建てられた4棟のシンコテージは、
  まるで別荘のようで内装、設備も充実している。

  自炊を原則にしているが7月、8月のピーク時には地元の「朝風呂会」
 (「ゆた〜と」オープン前に風呂の掃除をする変わりに一番風呂に入れる)
  の人達が前日より宿泊して、朝食を作ってくれることもあるという。
  7月、8月を中心に年間平成13年度5908名をピークに平成15年度
  約5272名の利用者は減少傾向にある。

  その他の施設には、平成11年度にオープンした温泉施設「ゆた〜と」が
  ある。年間利用者は平成11年145,630、12年150,281名を
  ピークに平成15年126,373名とキャンプ場同様、減少傾向になっ
  ている。
 ■ 『西米良村型ワーキングホリデー制度』
   交流人口の促進を目的とし、平成8年から調査・準備を始め、平成9年
  に具体的な実施要項を作り、平成10年に花卉栽培農家2軒、ゆず栽培農
  家2軒、ゆず加工会社1社の5者で8月から12月までの4ヶ月間を先ず
  試行してみることとなった。
   受入窓口は受入農家の負担を軽減させるため、取り次手数料を支払うこ
  とで株式会社米良の庄が行うこととした。
   開始に際しては西米良村「ふるさと村民制度」に登録の720名に案内
  状を出したが反応がなかった。応援をしてくれた地元紙のおかげで、全国
  紙にも掲載されるようになり、試行期間中に29名の参加者となった。

1.仕組み
  1)受入時期:
    受入側が人手を必要とする繁忙期だけとしている。
  2)滞在期間中の宿泊
    西米良双子キャンプ場のロッジを割引料金で提供。
  3)参加者の食事
    受入農家が無理にならないために、原則的に自炊とした。
  4)受入期間
    原則として休暇を含み3日から1週間以内。
  5)報酬
    宮崎県最低賃金の自給610円、実働7時間で1日4,270円

2.制度の稼働状況
  平成9年試行期間から平成15年度末までの参加者数は延べ289名
  滞在日数延べ1611日。リピーターが延べ43名となった。

3.制度の課題と今後の取り組み
  受入先は一時9軒となったが、現在、花卉生産農家5軒、ゆず生産農
  家2軒、ゆず加工会社1社となっており、年間の受入は50名が限界。
 
■ 総評  
  ワーキングホリデー制度で2組の結婚が決まったとの予想外のおめで
  たい話題や新聞などにも何度も掲載宣伝されたために村興しのきっか
  けとなったようだが、前述のように受入先はわずか8軒、年間の受入
  延べ人数は50名という現状だ。
  ワーキングホリデーの制度の良さは認めていても、労働報酬を支払っ
  てまでも手伝ってもらうのに躊躇している農家が多いようで、これ以
  上の展開は期待できない。
  村も「これでよし」と認めている。

  宮崎県観光協会発行の大型ポスターや西米良村のホームページや、募
  集の案内が際だち、さぞ大々的に展開しているだろうと、期待しつつ、
  いざ申し込んだら、バーゲンの限定目玉商品にのように「限定50人」
  で断られたという人達がかなりいるようだ。
  西米良双子キャンプ場を宿泊施設として活用し、ワーキングホリデー
  と一体となって相乗効果があがっているとのことだが、50名の平均
  滞在日数は5〜6日とのことで延べ宿泊者数は最大で300名の効果
  である。
  逆に夏場の需要の多いときに割引をしてワーキングホリデーの宿泊先
  となっており、他の一般客をお断りしている日もあるとのことで、売
  上増を阻害している可能性も出ている。

  第三セクター株式会社米良の庄は地産地消を前提に前述2施設の管理
  の他、プロパンガス販売、従来のほおずきの実を使った料理、装飾品
  作りなどの特産品の開発などを手がけ、まさに村の企業として重要な
  役割を担う経営としている。年間売上2億円、従業員34名と村とし
  ての雇用にも大きく貢献している。企業としても優良企業だ。
   
  キャンプ場と「ゆた〜と」は通年営業。現在の実績では人件費を含め
  て歳費超過の問題は出ていないようだが、現在の実績推移から予測す
  ると、近い将来は重荷になり、米良の庄の足を引っ張りかねない危険
  性をはらんでいる。

  一方、西米良村内の入込客推移をみると、入込客は年々増加傾向にあ
  る。平成11年に西米良温泉「ゆた〜と」がオープンしたことが大き
  く貢献していると説明をされたが、現実的にはキャンプ場利用者、「ゆ
  た〜と」の利用者は既に減少傾向となってしまっている。

  ワーキングワリデー制度の他に、ふるさと村民制度(年会費12,000円
  で産直品を送る制度)、山村留学(現在3名)、小川地区「語り部の庄」
  での山菜祭り、などの誘客活動などの成果が実り入込増になった。
  市町村合併を拒み、独立独歩の道を歩み出した西米良村だが、果たし
  てこのまま入込増の傾向が続くか、各施設の減少傾向と全国地市町村
  の実情に照らし合わせると疑問は残る。

  湖の駅建設をはじめ「8つの庄」建設プロジェクトが動きだし、再ス
  タートした、心機一転の今こそ、過去の事業を見直し、新たな道での
  村興しに着手し、活性化の布石にされることを期待したい。

              西米良村の動向
 10年 11年 12年 14年 15年
入込客数 52,134 101,724 128,729 134,961 142,736
宿泊者数 12,270 14,892 14,543 ―― ――
双子キャンプ村 2,911 5,248 5,877 5,908 5,272
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  グリーンツーリズム・町村興しアドバイザー
   有限会社LSプランニング 代表 長坂克巳

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